2023年のデジタルパブリッシング業界

デジタルパブリッシング業界においてイノベーションは、常に原動力であり、しばしば必要に迫られて生み出されるものとなっています。しかし、現在は多くの企業にとって前例のない時代であり、経済的な逆風、読者(ユーザー)の習慣の変化、次々と登場するテクノロジーによって、最も確立されたメディア組織でさえも、その適応能力が試されています。2023年3月末に、コロラド州ベイル(米国)で開催されたDigiday Publishing Summitでは、著名な経営者や専門家が集まり、パブリッシャーが再び革新と変革を遂げるための戦略について議論しました。

業界が岐路に立たされている今、パブリッシャーがより持続可能な未来を築くために検討すべき3つの主要分野を紹介します。

1) 収益モデルの多様化

ここ数年でわかったことは、パブリッシャーとして、ユーザーが求めるものに沿った「生き残る」ための手段を複数用意する必要があるということです。収益の多様化は、生き残るための鍵であると同時に、収益の成長を加速させるものでもあります。

パブリッシャーは、ニュースレター、ポッドキャスト、定期購読(サブスク)、イベントなどの提供を通じて、オーディエンスの知識を活用し、コンテンツから効果的に収益を上げることができるユニークな立場にあります。最終的には、そうした成長機会を統合して活用していくことになります。

例えば、「Dotdash Meredith and Reviewed」は、プロダクト提供を通じて経済的拡大を実現するチャンスの醸成に力を入れています。「The Atlantic」は、サブスクにフォーカスした非常に多様な戦略を掲げています。また「Leaf Group」は、体験型のイベントに継続的な大きなチャンスがあると考えています。そして「Wirecutter」は、ニュースレター戦略で成功を収めています。

いくつか存在する成功の可能性の中で、特定の収益源に依存しない、より弾力のあるビジネスを構築することで、パブリッシャーはイノベーションを起こすことができるのです。 実際に、ほとんどすべてのパブリッシャーが、複数の収益源を保有しています。そのような中で彼らが問いかけているのは、「いかなる時にも実行できる、ユーザーにとって最も価値のあるアクションとは何か?」ということなのです。

2) デジタルチャンスの最適化

サスティナブルなビジネスモデルとは、収益目標とユーザーとのより深い関係構築とのバランスをとることでもあります。パブリッシャーは、より深いエンゲージメント(ポッドキャスト)、コミュニティの構築(ニュースレターやイベント)、オーディエンスの拡大と維持(定期購読)、ジャーナリズムのサポート(eコマース)などを目的とした多くのイニシアチブを採用してきました。しかし、何千人ものユーザーがいて、それぞれがユニークなニーズ、興味、好みを持っているため、彼らが使っているマニュアルのCMSシステムでは、無数のコンテンツや販売するプロダクトを通して、すべてのユーザー体験をカスタマイズすることは不可能でした。

その結果、長期的な成功のために人工知能(AI)が注目されるようになりました。実際、WNIPの調査によると、パブリッシャーの3社に1社近くが、コンテンツや体験をパーソナライズするためにAIに注目しています。

そして、新たなデジタルの可能性を求めて話題を呼んでいるのは、ChatGPTだけではありません。Outbrain は、パートナーパブリッシャー皆様の懸念に耳を傾け、パブリッシャーがカスタマージャーニーを強化するためのオールインワンプラットフォーム:Keystoneを開発し、複数のイニシアチブを活用してコンバージョンを促進し、ユーザー体験と様々なビジネスニーズとを融合させました。パブリッシャーは、さまざまなトラフィックがさまざまなコンバージョンに結びついていることを理解しており、最高の体験を提供するだけでなく、組織全体の収益を最適化するために、人々のニーズに応えることが課題であると考えています。

3) 新しいアイデアと戦略にトライ

パブリッシャーは成長を加速させる方法を見つけるために、業界が安定するのを待つのではなく、積極的に動いていくことが必要です。ユーザーは、次に買うべきもの、旅行先、読むべき記事や本、といったさまざまな情報を求めており、パブリッシャーは、適切で質の高いコンテンツやサービスを通じて、その答えを提供する責任を負っています。あるパブリッシャーは、やりたいことをすべて実行するスペース的な余裕はないものの、自分たちだけが価値があると思うという理由だけで、ユーザーにサービスやコンテンツを提供することはしないように心がけている、と述べています。「その時、そのユーザー」にとって重要なものである必要があるからです。

イノベーションはこの業界にとって不可欠なものですが、成功と呼べる収益源は、あらゆるものと同様に波があり、もちろん、パブリッシャーごとに異なります。例えば、ローカルメディアや地域メディアは、全国的な組織やグローバルな組織よりも脆弱であることを認識するかもしれません。多様な収益源を持つパブリッシャーは、業界の浮き沈みを乗り越え、財務面での安定を維持しやすい最適な状況となります。変化を予測し、新しい戦略を試すことで、パブリッシャーは、より良いエンゲージメント、ユーザー価値の促進、そして収益の向上を実現するチャンスを獲得することができます。パブリッシャー業界はクリエイティブな考えの宝庫となり、パブリッシャーサイトは、新しいアイデアや戦略をテストし、時代の先端を行くためのプラットフォームとなるのです。

究極的には、今日の決断が明日の業界を形成していきます。新しいアプローチを受け入れ、積極的に進化を目指すことで、パブリッシャーは今後数年間のビジネスを支えることのできる最高のポジションに立つことができるのです。未来に目を向けると、適応し、革新することを厭わない人たちが繁栄していくことは明らかではないでしょうか。

※このブログは、2023年3月に本国Outbrain .inc から発表されたものを意訳したものです。